放課後等デイサービス・児童発達支援

障害児支援利用計画の引継ぎ書を作る:転園・転所・進学時に現場が困らないための実務ガイド

公開:2026年6月 / 対象:児童発達支援管理責任者・管理者・相談支援専門員 / 読了目安:約9分

児発から放デイへの移行、小学校入学、転居に伴う事業所変更——こうした「場の切れ目」で、これまで積み上げた支援情報が引き継がれず、子どもや家族が一から説明を繰り返す事態はよく起きます。引継ぎ書(支援情報提供書)を適切に整備することは、子どもの連続した支援を守るだけでなく、現場スタッフの負担軽減にも直結します。本記事では、放デイ・児発の児童発達支援管理責任者(児発管)が実務で使える引継ぎ書の作り方を、記載項目・作成タイミング・情報共有の手順まで具体的に解説します。

この記事の目次
  1. なぜ引継ぎ書が必要か——転園・転所・進学時の情報断絶リスク
  2. 引継ぎ書と障害児支援利用計画の関係を整理する
  3. 引継ぎ書の基本構成と記載項目
  4. 作成タイミングと渡すべき相手
  5. 保護者同意と個人情報保護の取扱い
  6. 進学(児発→放デイ)移行時の特有の注意点
  7. 転居・事業所変更時の引継ぎフロー
  8. 現場がそのまま使えるチェックリスト

1. なぜ引継ぎ書が必要か——転園・転所・進学時の情報断絶リスク

障害のある子どもへの支援は、複数の機関・事業所が連携して継続的に行われるものです。しかし現実には、「前の事業所でどんな支援をしていたか」「何が苦手で何が得意か」「保護者がどのような方針を望んでいるか」といった情報は、担当者の記憶や口頭確認に依存していることが少なくありません。

転園・転所・進学の場面でこの情報が断絶すると、次の事業所や学校は一からアセスメントをやり直すことになり、その間に子どもが混乱したり、支援の効果が後退したりするリスクがあります。引継ぎ書は、こうした「場の切れ目による支援の空白」を防ぐための実務ツールです。

現場でよくある困りごと:「引き継ぎたいが、何を書けばよいかわからない」「相手先が受け取ってくれるのかわからない」「様式が統一されておらず事業所によってバラバラ」——こうした悩みに、本記事は実務ベースで答えます。

2. 引継ぎ書と障害児支援利用計画の関係を整理する

「引継ぎ書」は法令上の統一様式があるわけではなく、各事業所・自治体が独自に作成するものです。一方、障害児支援利用計画は、指定障害児相談支援事業所の相談支援専門員が作成する法定書類であり、支援の目標・サービスの組み合わせ・モニタリング計画などが含まれます。

引継ぎ書は、この利用計画の内容も参照しつつ、「現場が実際に行ってきた支援の実態」をより具体的に伝えるための補完的な文書と位置づけると整理しやすくなります。

文書作成者主な目的
障害児支援利用計画相談支援専門員(または保護者によるセルフプラン)支援の目標・サービス調整・行政手続き
個別支援計画児童発達支援管理責任者事業所内での具体的な支援内容の計画
引継ぎ書(支援情報提供書)児発管・担当スタッフ等転園・転所・進学時の支援情報の引き継ぎ

引継ぎ書は、個別支援計画の内容を次の支援者が使いやすい形に整理したもの、と考えるとわかりやすいでしょう。

3. 引継ぎ書の基本構成と記載項目

統一様式はありませんが、受け取る側(次の事業所・学校・相談支援専門員)が「これだけあれば支援を始められる」という観点で項目を組み立てることが大切です。以下は実務上よく使われる構成例です。

① 基本情報

② 支援の経緯・これまでの関わり

③ 子どもの現在の姿(得意・苦手・好き・嫌い)

④ 日常生活・セルフケアの状況

⑤ 家庭・保護者の意向

⑥ 関係機関との連携状況

⑦ 次の支援者へのメッセージ・申し送り

記載のコツ:「〜できない」という表現より「〜があるとスムーズ」「〜のときは時間をかけると落ち着く」といったポジティブな記述や具体的な行動レベルの表現を心がけると、受け取った側がすぐ実践に移しやすくなります。

4. 作成タイミングと渡すべき相手

引継ぎ書は、移行が決まった段階でできるだけ早く着手し、転園・転所・進学の少なくとも1〜2か月前には完成させることが現場的な目安です。直前になると、保護者への確認や修正の時間が取れなくなります。

移行の種類渡す相手(例)作成の目安タイミング
児発→放デイ(就学移行)放デイ事業所・特別支援学校/学級・相談支援専門員年明け〜2月頃(就学前)
放デイ→別の放デイ(転所)新しい放デイ事業所・相談支援専門員転所決定後できるだけ早く
転居に伴う利用変更新事業所・新しい相談支援専門員・新しい自治体窓口転居日の1〜2か月前
高校進学・卒業後移行就労移行支援・生活介護等の事業所・学校進学・移行決定後できるだけ早く

渡す相手は「次に子どもと関わる人」全員が基本です。ただし、個人情報を含む文書のため、誰に何を渡すかは必ず保護者の同意を得て判断してください(詳細は次章)。

5. 保護者同意と個人情報保護の取扱い

引継ぎ書には診断名・障害種別・生活状況など、センシティブな個人情報が含まれます。作成・提供にあたっては、個人情報保護の観点から次の点を必ず確認しましょう。

  1. 書面または口頭(記録残し)で保護者の同意を得る。誰に・何を・いつ提供するか具体的に確認します。
  2. 提供する内容の範囲を保護者と確認する。診断名や医療情報の記載を希望しない保護者もいます。
  3. FAXや郵送での送付先を慎重に確認する。誤送信・誤送付は個人情報漏洩に直結します。
  4. 引継ぎ書の写しを手元に保管する。後から「渡した・渡していない」のトラブルを防ぎます。
注意:事業所の個人情報保護方針・規程の範囲内で運用してください。また、第三者への情報提供は原則として保護者(法定代理人)の同意が前提です。緊急時や虐待対応など例外的な場面については、自治体や法令の取扱いを別途確認してください。

6. 進学(児発→放デイ)移行時の特有の注意点

児発から放デイへの移行、とりわけ就学(小学校入学)に伴う移行は、子どもにとっても保護者にとっても大きな環境変化です。この場面では、引継ぎ書の役割がとくに重要になります。

学校側との情報共有

特別支援学校・特別支援学級・通常学級(通級含む)のいずれに就学するかによって、関係先が異なります。学校の特別支援コーディネーターや担任・学校管理職への情報提供は、学校側の同意と窓口確認のうえで行います。

なお、就学先の学校は教育分野であり、障害福祉の事業所とは情報の取扱い文化が異なることがあります。受け取る側が使いやすい書式・表現に整えることが、実際に活用される引継ぎ書につながります。

放デイ選定と「受け入れ前情報共有」

就学後に利用する放デイが決まった段階で、児発の担当児発管から放デイの担当者(および児発管)へ引継ぎを行うのが理想的な流れです。就学後の環境変化で子どもが不安定になりやすい時期を、スムーズに乗り越えるための「情報の橋渡し」です。

実務ポイント:放デイの見学・体験利用の段階から「引継ぎ書を作成する予定であること」を保護者に伝えておくと、後の同意取得がスムーズになります。見学時に関係者が顔合わせできる機会をつくれると、文書だけでは伝わりにくいニュアンスも共有できます。

相談支援専門員との連携

障害児支援利用計画を作成している相談支援専門員は、就学移行時のサービス変更手続きの中心的な役割を担います。引継ぎ書の作成・共有においても相談支援専門員と連携し、情報の重複・矛盾がないようにすることが大切です。セルフプランの場合は保護者自身が中心となるため、より丁寧なサポートが必要になることがあります。

7. 転居・事業所変更時の引継ぎフロー

転居に伴う利用変更は、新しい自治体での受給者証の取得手続きも並行するため、情報共有のタイミングが複雑になりがちです。おおむね次のような流れで進めると整理しやすくなります。

  1. 転居予定を確認し、保護者から新しい住所地・希望事業所のめどを聞く。
  2. 引継ぎ書の作成に着手し、保護者に内容確認・同意を得る。
  3. 新しい自治体の担当窓口・新しい相談支援専門員の見通しを確認する(保護者と一緒に確認することが多い)。
  4. 新しい事業所が決まり次第、引継ぎ書を渡す(保護者経由か事業所間直接か、方法を確認)。
  5. 転居後、新しい事業所での支援開始後に「うまく引き継がれているか」を保護者にフォローする。
注意:受給者証は市区町村が発行するため、転居先の自治体で新たに申請が必要です。引継ぎ書の作成と並行して、受給者証の切替えスケジュールを保護者と確認してください。サービス利用の空白期間が生じないよう、早めの手続きが必要です。

8. 現場がそのまま使える引継ぎ書作成チェックリスト

制度改定の見逃しを、仕組みで防ぐ

引継ぎ書の整備と並行して、加算要件の変更や書類様式の更新も現場を悩ませます。
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本記事は一般的な情報提供を目的としており、法的助言・行政指導に代わるものではありません。制度の詳細・最新の取扱いについては、必ず一次情報(厚生労働省通知・告示等)および各自治体の指定権者にご確認ください。